@incidentsTF
風来坊 伊山

「テセウスの船」というパラドックスがあります。

船の部品を一つ一つ交換していき、全てが入れ替わったらそれは同じ船と言えるのか
取り替えた古い部品を使って違う船を作ったら、それはどちらがテセウスの船と言えるのか
というものです。



「依存ロボット」 




その子どもはとても頭がよく手先が器用で
またお母さんが大好きでした。 


とてもとても貧しい家庭。
それでも女手一つで母の愛情いっぱいに育てられた彼はすくすく育ち 
大きくなった頃には花好きな母のために花壇を作ってあげれるほどでした。

「お母さん。お母さんの好きなスズランを植えといたよ」 

「ありがとう。おまえは本当に器用な子だね。将来はエンジニアにでもなったらどうだい」 

「エンジニアってなんなの?お母さん」 

「さあ、よくわからないけどねぇ。人の為になにか研究したり作ったりする人の事だと思うよ」 

「わかった、じゃあ将来はお母さんの為になにか作ったりする」 

「まったくこの子ったら」 

そういう母の顔はとても幸せそうでした。


この家は彼がまだ小さいころは母の裁縫などで生計を立てていましたが 
大きくなった今では彼の作る家具を売ったり、修理など請け負って生活をしていました 。

「お母さんを幸せにしたい。
ずーっと一緒に暮らしたい。」 

母の悲しくうなだれた背中を見て育った彼には母の幸せこそが自分の幸せであり 
また、母の愛情こそが自分の生きる糧だったのでした 。





ある日の事 
後ろから猛スピードで走ってきた車に母は轢かれてしまいました。
それはあっというまの出来事でした 。

なんとか一命はとりとめましたが、彼が病院に駆けつけるとそこには 
右手と左足を失った母が横たわっていました。

「ごめんね、もうおまえに裁縫を教えることも抱きしめることもできそうにないよ」 

「お母さん…」 

彼はそのまま病院を飛び出してどこかへ向かってしまいました。


数年後 
未だ姿を現さない息子からの仕送りで入院を続ける母のもとに 
彼はむかしむかしに言われた通りに再生医療のエンジニアとなって帰ってきました 

「おお、おまえなのかい?」 

「長い間心配かけてごめん。母さん」 

「まったく。私がどれだけおまえを心配したかわかってるの?」 

「しかたがなかったんだ、母さんを救うためにいろいろなところへ研究させてもらってたからね」 

そうして彼は母にあるものを渡しました 

「あなたの為に作った義手と義足のロボットです。これでやっと一緒に暮らせるね」 


こうして彼の頭脳と母への愛があわさって、母はなんとか退院することができました 


昼間はお花に水をやりながら母の世話をし、夜は元気になった母の手料理を食べる 
生活は彼の開発した義体のおかげで非常に裕福です。

「これでやっと幸せに母と暮らせる」 

彼は夜そうつぶやきながら、機械の手足を持つ母にそっと毛布をかけてあげました。




次の日 
この町に大きな大きな地震が起こりました 。

仕事で遠い研究所まで向かっていた彼は急いで町に戻り、母の安否を確かめに戻ると 



そこには天井が落ちて下敷きになっている母の姿がありました。

頭はグシャグシャに潰れてしまっていて
床一面に真っ赤な血が広がり
スズランの花壇にも染み入っていました。


言葉を失った彼は次第に目が虚ろになっていき、しばらくぼぅーっと 
その光景を眺めていました 

「大丈夫、また作ればいい…」 

ぼそっと呟く彼 

「今度は頭を作ろう」 










血をすったスズランはキレイな花を咲かせていました 
その姿は悲しくうなだれていました。


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