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短歌の世界の沈黙について

私は短歌を作るようになって7年目ほどになる人間です。同人イベントに短歌の同人誌を出したこともありますが、この7年間、結社や学生短歌会といった、いわゆる「歌壇」に連なるような組織に所属したことはありません。フォローしている人にも短歌関係の人は多くありません。

ある無所属の女性歌人が、5年前、現在は結社に所属している男性歌人に性的嫌がらせを受けたと、metooタグを付けて主張するtweetを偶然見ました。当初は男性歌人から送付されたDMのスクリーンショットを男性歌人の名前を伏せた状態で提示していましたが(現在は削除)、その後10/16に名指しで改めて批判tweetを行いました(名前を含めたtweetは削除)。名指しされた男性歌人は粛々と対応を行う旨tweetしていましたが、現在はアカウントに鍵をかけています。
結社にも学生短歌会にも所属したことがなく、短歌の友人の少ない私は女性歌人と男性歌人のいずれとも話したことはありませんし、どのような人物かも殆ど知りません。まして5年前に何があったかなど、把握できるわけもありません。したがって本件については判断を保留する以外の選択肢はなく、なんだか怖いけど最後に見た男性歌人のtweetからしても、きっと今は水面下で事が進んでいるのだろう、いずれは何かしらアナウンスがされるのだろうな、と考えていました。短歌関係の方々が本件についてtweetをしないのも、きっと似たような気持ちなのだろうなと考えていました。

しかし10/18~10/19にかけての夜、「Twitterの歌人達から本件に関するtweetが見られない現状自体が本件の真相(おそらくは女性歌人の主張が虚偽であるという趣旨)を暗示しているように思う」といった趣旨のtweet(現時点では削除されているものもあります)が、恐らく批判された男性歌人と知己であろう男性歌人複数名から発信されているのを見かけて、非常に不愉快な気持ちになりましたし、怖くなりました。当該tweetは私が見た時点でいずれも10時間以上経過しており、当該tweetを見た他の歌人は当然いたはずですが、その人たちの誰もそのtweetについて批判せず、だからこのtweetは消されないままだったのだろうなと思いました。更に、どのような意図かは判断できませんが、当該tweetお気に入りに入れている短歌関係者も十名程度確認できました。
……とはいえ当事者に関係のない自分は引き続き本件については経過が明らかになるのを待つしかないだろうと当初は考えましたが、やはり看過できず、その後以下の通りtweetしました。

“なんか本当に腹がたつのだけど、短歌界隈のミートゥー告発案件、真相が分からなくて判断しようのないことを差し引いても、真相究明を求める声すらろくに上がらずみんな沈黙してる現状は性的被害に遭ったことのある人にとっては凄く怖いと思いますよ。私は怖いです。”

“みんな何も言わないから言及された方にやましい事はないのだろうという趣旨に読める仄めかしtweetを見かけましたが、願望表明にしても無神経すぎませんか。私にはただの相互監視に見えるし、そういうtweetをこっそり諌める方もいなかったんだなとしか思えない。”

“あんな仄めかしtweetは許容されてて他の人は黙ってるって、結果的には片方にだけ都合のいい状況しか生んでないですよ。真相は何もわからない状態なのに。それでいいんですか。それが良いんですか。”

“私が結社に入ってる性的被害経験者なら、セクハラ対策について結社誌に掲載されても結局誰にも頼れないな、絶対相談しないでおこうって現状見て思います。”


すでに記載の通り、本件は現時点で事実関係が明らかにされておらず、今TLで確認できるのは女性歌人の削除されなかった一部のtweetのみです。tweet内容の真偽は私を含む第三者にはわからないので、現時点では判断を保留せざるを得ないことは既に書いた通りです。
女性歌人はファンも多く、今回名指しされた男性歌人を加害者と断定し非難するtweetをされる方もいらっしゃるようですが、事実関係の明らかでない現状、これは少々危うい行為ではないか、と個人的には思います。短歌をしている人たちの中から本件に関するtweetが見られないことは本件の事実関係が明らかにされていないことに加え、既にこうした非難のtweetが出ていることへの警戒感などもあるのだろうと推測しています。

しかし判断を保留せざるを得ないとは、男性歌人を加害者と断定し非難する行為が現時点で適切ではないのと同時に、女性歌人の主張が虚偽である、被害者ではないと断定する行為もまた、現時点では適切ではないということを意味します。
このような状況下において、TLの短歌関係者が沈黙を守っていることを女性歌人の主張が虚偽である証拠であるかのように仄めかす歌人のtweet(と、そのtweetへのRTやlike)は私にとって、ハラスメントなどまるで存在しなかったかのように振る舞う、典型的な加害者の態度に重なって見えました。周りが沈黙していればなおさらです。

今回の件については経緯をきちんと明らかにするべきだと、5000人以上フォロワーのいる著名な若手男性歌人がtweetされています。考えすぎかもしれませんが、そのtweetの反応(RT、like数)も、彼のフォロワー数を踏まえれば不自然に少ないように私には見えます。まるで短歌関係者がこの件について自らtweetすることはもちろん、RTやlikeすることさえ互いに躊躇う雰囲気があるかのような。

くりかえしますが、今回の件について加害・被害があったかどうか、今の私にはわかりません。わかりませんが、しかし本件について司法的判断を含めた適切な対応がなされているのかどうか等の現状が全く分からず、短歌の世界の人はみな沈黙を続け、そんな中で女性側に非があることを仄めかすような歌人のTweetが放置されているのを見た時、ああこの世界で誰かが人権を侵害されるような何かがあったとき、仮に被害者が声を上げてもきっと今目の前で起きている「これ」とまさに同じように、言及されず、仄めかされ、潰されるのだろうなと思いました。簡単に、想像できる。

私は昔、職場で少し嫌な経験をしたことがあります。その時思ったのは、自分に対して直接嫌なことをしてくる加害者にはもちろん傷つきますが、加害者が加害者なのだと必死に訴えてもろくに理解しようとしない、加害者と従来通りの日常を続ける「周りの人達」にも同じくらい傷つけられるし、混乱させられるのだということです。
誰もが沈黙し、表立っては何も言わない。そうしてこれまで通り、楽しい日常の話を続けている。やがてその中からハラスメントなんてなかったかのような、肯定するような発言が出てきて、誰もそれに反論しない。
なぜあの人たちは今まで通り日常生活を送っているのだろう。本当はあの人たちが正常で、傷ついている私がおかしいのだろうか。疑った瞬間、これまでに言われた様々な誰かの言葉が脳裏に蘇る。私がおかしいのだろうか。あんな人間が笑いながら生きているこの世界はおかしいと思う、私の方がおかしいのだろうか。
私がおかしいのだろうか。
私がおかしいのだろうか。
みんな、死ねばいいのに。

今わたしがTwitterに見ているのは、かつて職場で見たそれにとても近い光景です。違うのは加害者が加害者であるかどうか、現時点では確定していないというだけです。それが今回の件で一番重要な点だと主張される方もいらっしゃるかもしれませんが、仮に今回の件で加害者である可能性のある方が実際にはそうではなかったとしても、このような事件が起こったとき短歌の世界の人たちがみな沈黙すること、その結果、誰かを見殺しにすることさえあり得るだろうと思わせる、この状況がそもそもおかしくないですかと私は言いたいのです。

仄めかすようなTweetをしたのは数人でしょう。同意したのは一部でしょう。そんなtweetは見なかったから関係ないという方もいらっしゃるでしょう。でもtweetが10時間以上、批判されずに放置されていたのも事実です。
第三者から見れば短歌の世界の人たちの、全員とは言わないでもそれなりに多くの人がそれに同意し、加担したように見えます。そんな見方をする奴の方がおかしいのだという主張は通らないのではないでしょうか。例え内心でどう思っていようと、沈黙を選択すること、それにより無言の同意を示す(ように見える)こと、それ自体が他者を抑圧し傷つけるという状況は確かに存在します。
Tweetされた方は仲間内だけにわかる暗号をこっそり呟いたつもりかもしれませんが、アカウントに鍵をかけていない状況で「仲間内だけの暗号」などありえません。(本件に関する私のtweetもRTやlikeの数は少ないですが、見ている方はそれなりに多いだろう、と思っています)当事者の片方と知己であるといった事情を差し引いても、事の真偽の分からない状況、しかもインターネットという場においてそうした発言をすることは、控えめに言っても非常に不用意だと私は思います。

そもそも今回の件について、現時点で事実関係が明らかでなく、故に判断を留保せざるを得ないことは確かですが、だからといって短歌の世界の、当事者以外の方にやれることも言えることも何もないと私は思いません。
短歌の世界において性的嫌がらせは許されない、短歌の世界はそうした行為を否定する、したがって今回の告発についてはきちんと検証の必要があるしする(べきだ)、という意志表明は、真相がわからない今こそ、短歌の世界に対する外部からの信頼が失わなれないために重要と思います。
が、そうした意見表明は18日夜の時点でわたしの見る限り、先に記載した著名な若手男性歌人以外には見当たりませんでした。それ以外では組織単位でも個人単位でも、どこにも見当たりませんでした。
(念のため書きますが、この文章は関係者の方が把握している内輪の事情や水面下の状況を早急に開示せよと迫るものではありません。内輪や水面下に行けない・いかない人間に不安しか抱かせないような状況がおかしいと主張しています)

短歌の世界に所属する人全員が一枚岩の同じ組織に所属しているわけではありませんし、「短歌の世界の代表」という存在がどこかにいるわけではないでしょう。誰かが号令をかければこれまでのあり方が一斉に変わるものでもないでしょう。
しかしそれは社会というもの全体がそうですし、個人的には、短歌の世界は、界隈全体が第三者から見てどのように見えているかという点について非常に無防備な印象があります。

更に、今回の件については今後きちんと司法手続きを含めた検証が行われる予定だ、今その準備を進めているといった趣旨のアナウンスも現時点ではされていません。
男性歌人のtweetから、本件については法的手続きが水面下で進められているのだろうと私は推測したと最初に書きましたが、これはあくまで私の希望的観測であり、第三者から見れば、本件について今後も何の検証もされないという可能性さえあるように見えるということです。
そんなアナウンスは本人以外できないという意見もあるかもしれませんが、男性歌人は無所属の歌人ではありません。本人が女性歌人ファンからの誹謗中傷対応のため、自分のアカウントに鍵をかけたとしても(それ自体は本件の経緯からやむを得ないだろうと私は考えます)、例えば結社の関係者など、しかるべき誰かが代理として、関係者に影響が出ず、かつ第三者に不要な不安を与えないような情報提供を行う方法はそれなりに考えられるのではないでしょうか。少なくとも、本件の当事者両方が無所属の歌人だった場合に比べれば、そうした対応は比較的容易なはずです。

男性歌人の所属結社は最近、結社誌にハラスメント対応について結社会員向けの文章を掲載したことで話題になっており、結社としてのTwitterアカウントもありますが、現時点で結社としての対応は特段されていないように見受けられます。
しかしハラスメント経験を持つ方は短歌結社の中にも当然いらっしゃるはずで、そうした結社内の方々に安心してもらうためにも、結社は何かしらの対応を行うべきなのではないでしょうか。現状では当該結社のハラスメント対応は形だけのものだと、結社内外に周知しているようなものです。

単純な比較はすべきではありませんが、例えばこれが民間企業ならば、自社の社員が個人的な人間関係の問題とはいえ、SNSで告発を受け、それが拡散されていることについて何かしらの対応・組織としての表明はするだろうと思います。
そしてそのような表明がきちんとされていれば、仮に一部に不用意な発言をする人がいても、私はここまでショックを受けなかっただろうと思うのです。

本件については事実関係が明らかにされていない、もしかしたら女性歌人側が虚偽を言っているかも知れないのだから、そう主張される方もいるかもしれません。
しかし、だから今回は全て「身内」で事を済ませるが、今後、「ほんとうの」被害者が声を上げたらその時には今回と違ってきちんと情報公開し誠実に対応する、などという主張を、一体だれが信じられるでしょう。
そもそも「ほんとう」の被害者と「うそ」の被害者を見分けるのは、そうして対応方針を変えることができるのは「誰」なのでしょうか。
色々と複雑な事情があるのだと、そう言う方もいるかもしれません。もちろんそうでしょう。「複雑な事情」のないハラスメント案件なんてこの世界に存在するのでしょうか。

SNSにおける組織広報の本質は情報拡散ではなく、炎上の芽を事前に摘むことなのだと広告企業の方に伺ったことがあります。その意味では男性歌人の所属結社、及び短歌の世界はSNSを使いこなせていませんし、短歌というジャンルの広報に失敗しています。むしろ自らについてきわめてネガティブな広報を行っているも同然です。
すなわち、我々は関係者のハラスメント行為疑惑に対しては無関心であり、外部に対して情報公開をする必要性を全く感じていない。詳細は一部の「身内」にしか公開する必要性を感じないし、「身内」が不用意な発言をしても「身内」用の発言なので構わない。仮に外部の人間がそれについて不快に思おうと不安に思おうとそんなことは関係ない、放っておけばいい。
それによって損なわれるものは何もない。
……ならば短歌の世界は詠み手や読者を増やすなどということは未来永劫考えず、法の支配を逃れた文字通りの秘密結社としてwebから撤退すれば良い、そう思います。


私は短歌結社に所属したことはありませんが、結社の歌会や歌集の批評会など、短歌結社の方が主催するイベントには何度かお邪魔させて頂いたことがあります。最近は忙しくてご無沙汰していますが、今回私がtweetする切欠になったtweetを見たとき最初に思ったのは、オフラインで短歌の人たちに会うのは暫くやめよう、ということでした。
私は短歌の中でもBL短歌や二次創作短歌と呼ばれるものを詠んでいて、同じようにBL短歌や二次創作短歌を詠む方やその作品が(BL短歌や二次創作短歌ではない)短歌を詠む人から酷い言葉を投げつけられるような場面をTwitterで何度か見ています。自意識過剰だとは思いつつ、結社の歌会や歌集の批評会に行くときは、だからいつも内心で緊張していますし、必要以上の関わりを持ちたいと思ったことはありません。怖いからです。
BL短歌や二次創作短歌について酷い言葉を投げつけられた時、いわゆる「歌壇」、短歌の世界の人が助け舟を出してくれたり、酷い言葉を投げつけてくる誰かについてあれはおかしい、やめるべきだと表明し、本人を諌めてくれるといったようなことは、私の経験や観測範囲の中で殆どありませんでした。私にとっては今回の件が起こる前から、例え規模こそ小さくても、短歌の世界の人が仄めかすような形で誰かを傷つけるような場面、短歌の人が短歌の世界についてネガティブな広報をしているも同然の場面は、何度もあったのです。二次創作やBLを経由して短歌の世界に触れた方が、RTで見た短歌に関するtweetに、短歌の世界はあんな怖い世界なのかと呟くのを見たこともあります。

短歌の世界の人たちみんなが悪い人じゃないだろう、と思っていました。私だって短歌以外の別の分野について、狭量な態度を取ることはあるかもしれません。知り合いに対して厳しい態度に出れないことはしょっちゅうです。結社に所属する歌人の方とオフラインで楽しくお話ししたこともあります。そもそもTwitterはテレビ番組やオフラインの空間と違ってみんなが同じTL、同じTweetを見る場ではありません。お互いの興味や関心も違うのだから、こちらの状況に気付かず見過ごしてしまうことも当然ありえるだろうと思っていました。
でも短歌の世界以外の人からもRTされてくるような、関係者のハラスメント行為疑惑に関するtweetがあってもみな沈黙を続け、誰かを貶めるような仄めかししかされないのなら、きっと目の前に死にそうな人がいたとしても短歌の世界の人たちはずっと沈黙したまま、その人が死んでいくのをみんなで見守っているのだろうなと今回思いました。


以前通っていた歌会で主催の方が、自分はこの歌会を参加者にとって安心できる場にしたいのだ、だからどうか自分が間違ったら率直に言ってほしいと話していたのを覚えています。当時、短歌の世界では本件とは別のハラスメントが話題になっていて、それに関連しての発言でした。
今思うのは、あれは「安心できない場」が既に現実に存在するからこその言葉だったのだなということです。



20181024追記
以下、追記します。
・この記事は19〜20日の夜に作成、URL掲載tweetをしました。
・22日、ある方が本記事へのリンクを貼ったTweetをRT後、結社内外の方々で運営するblogにセクハラに関する記事を緊急アップされているのを見ました。
・23日、結社に所属されている方が匿名blogで本記事について書かれている文章を読みました。記事自体は20日に書かれたようです。著名歌人の言及tweetはそこまで極端に少なくはないかもと御指摘ありましたので、そこは書きすぎだったかもしれません。

・本記事にも記載の通り、私は本件について真相開示を求めるものではありません。匿名blogの方も記載されていますが、本件についてはSNSで告発がされた以上、短歌の世界の外に広く知られている前提で動いた方が良いのではないかと考えています。
・したがって当事者または関係者には本件の顛末を、ずっと後、全て終わった後に整理して対応して頂きたいです。

・本件については私もある意味「発信者」の立場です。その意味で、当方の発信に応えてくださった方がいたことを書かないのは今後本件について一切tweetしないと書いたとは言え、フェアではないと思ったので、追記します。応答のあったこと、本当に救われる思いでした。有難うございます。
・なお2点目の件については記事掲載tweetにリプライする形で書いています。が、記事掲載tweetだけ見る方もいらっしゃると思いますので改めて書いています。
・今後、具体的な結論等が出るまで追記もtweetもしないつもりです。


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