2014年5月12日(月)
春告鳥(はるつげどり)はウグイスの異名だと辞書にある。では夏告鳥はといえば、決まったものはないが筆頭格はホトトギスだろう。古くから詩歌にうたわれてきた。江戸川柳に〈ほとゝぎす二十六字は案じさせ〉とある。はて、そのココロは▼和歌は三十一文字(みそひともじ)だが、ホトトギスを詠み込めば五文字は決まる。残る二十六字をどう仕立てるかが思案のしどころというユーモアだ。この鳥が人気のお題だったゆえだろう。滴(したた)るような初夏の緑に、その鳴き声はよく似合う▼久しぶりに拝聴しようと、山梨と長野の県境を歩いた。時期が早すぎたのか美声は聞けなかったが、山の中ではウグイスのホーホケキョがしきりに響いていた▼鳥の声を人の言葉になぞらえて聞くことを「聞きなし」という。ホトトギスなら「てっぺんかけたか」や「特許許可局」で知られる。鳴き声で鳥がわかれば森歩きの楽しみは倍増しだが、これがなかなか難しい▼ともあれ、幾万の野鳥が生まれ、育つ季節である。今年は、リョコウバト(旅行鳩)が滅んで100年になる。何十億羽も北米の空を舞っていたのに、乱獲され、マーサと呼ばれた最後の1羽の死で絶滅した。自然に対する人間の愚行として語り継がれるできごとだ▼日本では近年、スズメやツバメが減っていると気がかりな話を聞く。ありふれた生き物が消えていく現実に鈍感ではいられない。燕雀(えんじゃく)に限らず、野の鳥を守ることは、日本の山河を守ることと同義のはず。薫風のなかで愛鳥週間が始まっている。