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日本語全文概訳/何清漣 @HeQinglian 氏【2つの制度の理想;中国の夢・米国の夢】

2013年の両会(全国人民代表大会、中国人民政治協商会議)が終わり、内外の習近平ファンが待ち望む「習・李克強新政時代」のテーマ「チャイナドリーム」が登場した。そのキーワードは相も変わらず「中国は国家繁栄・軍事強化によって諸民族の間に立つ」ー実際の意味は中国を世界にルールを押し付ける権力をもつ強国にするーである。

だが、「麗しのチャイナ」のバブリーな夢は、両会開催中に黄埔江にプカプカ浮かんだ1万頭を遥かに越えるブタの死骸で又してもオジャンになった。そこで中国政府の宣伝の重点は習近平の就任演説で9回も繰り返し使われた言葉「チャイナドリーム」、「チャイナドリームこそ民族の夢、全中国人の夢」等という空疎な話の上に置かれることになり、中国人は皆ガックリした。なぜなら、習近平の語った”チャイナドリーム”は、権力や富をもった者達の夢であり、政治利権集団の夢であり、自分達の暮らしが良くなる事とはなんの関係もないと承知の事だったからだ。


《「チャイナドリーム」は国家主義の壮大なお話》

習近平の”中国の夢”には新味は無いといっていいだろう。依然として毛時代に始まり4代指導部交代しても衰えぬ『富国強兵』戦略にほかならず「改革のしないとどうにもならない」という共通認識には無縁な話だ。

胡錦濤は第二期任期(08~12)にこの『改革へのコンセンサス」の破綻という大きな危機に直面した。鄧小平の「先富論』を柱とする「改革の共通認識」が破産した理由は、一に「富国強兵」に突っ走り、民衆に生存権を含む権利を全く与えず、二に、共産党貴族階級が(底辺の悪徳官吏まで)こぞって、公共財産と民衆の生存に必要な資源さえも略奪した。第三に09年以来、政府が経済成長という虚飾の繁栄を維持する為に貨幣を増発し続け、インフレによって巧妙に民の財産を捲き上げたからだ。これはさすがに胡錦濤体制の内部からも『時限爆弾付きの羅漢さん回しゲーム』をやってるようなものだ』と批判があったほどだ。

「富国強兵」は、遡れば19世紀、1840年以来の強国への夢であり、鄧小平改革の初期にはほとんどすべての中国社会各層がロクに考える事も無く受け入れた「夢」であった。また経済成長とGDPがぐんぐん上昇するにしたがって、中国政府も民衆の福祉向上ではなく軍事の現代化と国家的地位の向上を第一にしたのだ。だが「富国」というなら、もう実は中国では達成されている。「富国」というのは政府が豊かになることで、中国では政府が全てのあらゆる権力を独占しているせいで、2009年にはもう政府の財政収入自体はGDPの3分の1も占めるに至ったのだから。

 「強兵」については2つの面からみなければならない。軍事費支出から言えば中国は既に世界第二位で、専門家は10年以内に米国を抜くだろうとみている。ストックホルム国際平和研究所の最新報告はこう予測している。08年から2012年間に中国の武器輸出は162%まで暴騰し、世界5位になった。しかし軍隊の戦闘力となると、何人かの高級将軍級が公然と軍の深刻な腐敗に言及しているような軍隊の戦闘力には実戦の検証がないとなんともいえない。

中国国力が伸びるに伴い、中国政府も本当に”立ち上がった”。国際的な事柄で、中国の参加と支持がなければいかなる重大な解決策も国連安保理を通過させることはできない。中国が大量の援助で獲得した「アフリカの兄弟」の応援は米国に対抗する重要手段で、中国はキューバやジンバブエ、スーダン等の人権面で劣悪な国家群の支持を得て、国連人権委員会を”暴政者人権蹂躙委員会”に変えることにまんまと成功し、続いて人権理事会の目標を空洞化させ、文革時代の悪行を含む中国の人権に対するいかなる批判させないようにしている。

だが中国が”立ち上がった”からといって、それは中国人民がの生活がなりたつようになった、というわけではないし、国家としての強大さは別に国内の人々の生存環境を改善したわけでもない。中国人の人生はその両親の地位と密接な関係があることに気づいている。「太子党」「紅2代」「官2代」「富2代」など言葉は「本格的親の七光り時代」到来の社会指標である。それはまた中国が次第に「身分固定型社会」に回帰している社会指標でもある。「紅色家族(共産党高級幹部一家)」の目もくらむ様な大富豪成金神話や政府高官が簡単に何億もの”灰色収入”を得る話、「迷惑は隣に押し付ければOK型ジャングルの掟」は人民と政府間の信任を見事に失わせたのである。

 胡温体制の治世10年が幕を下ろさぬうちに、中国人は土地没収、家取り壊し、失業、インフレ、貧富の差拡大の痛みに直面したばかりでなく、今や、貧富貴賤をとわずに社会各層がすべて環境汚染、有職食品、水汚染の恐慌に覆われ、怒り嘆いている。中国人の命の尊厳は何処にあるというのだろう? 

習近平の前途には胡錦濤の幸運はない、と断言する。習が毛沢東の詩を引用し世界にその「チャイナドリーム」を強くアピールしようとしているまさにその時、他方で無数の中国人が世界中の赤ちゃん用のミルクを買おうとして制限されているのだ。黄浦江の「数えきれないブタの死体がどんどん流れてくる」ゾッとする様な現実に、人々は政府の所謂「ビューティフル・チャイナ」の実体が真の「民主中国」とどれほどかけ離れたものかを認識させられ愕然としているのだ。


《アメリカンドリーム 自由と民主の偉大な結晶》

「アメリカンドリーム」の最も物質的な説明としては「安定した職業、住宅、車」である。私が「アメリカンドリーム」の存在を知ったのは1980年代だった。米国自由主義者の名著「富と貧困」(*ジョージ・ギルダー著)の中のこの単純でわかりやすい解釈をみたとき感動で震える思いだった。「世界の超大国」の国民の理想がかくも分かり易く、民主の中味を凝縮していたのだ。読み進むうちに「アメリカンドリーム」という由来がその物質面と精神面の両面から米国は1776年の建国以来、ずっと自由が繁栄を支えて来た国柄だということが理解できてきた。

米国の民主とは個人の自由の基礎の上にたった憲政の自由であり、「アメリカンドリーム」と意味は人としての自由と富かになることを主眼としており、建国時の「広い土地を各自が得る」という夢はやがて「仕事・家・車」に変わったが、その精神は変わらず、公平な状況の下で、個人の能力を使って、社会と経済活動に携わり、各人にそれぞれ成功し繁栄することが可能ということが原点なのである。この目標達成のために「アメリカンドリーム」は一人一人の子供に教育を受ける権利を以て、彼らの人生のスタート地点における機会の平等を保障するものだ。ジェームズ・アダムズの「The Epic of America」が「アメリカンドリーム」という言葉を一躍有名にしたが、そのテーマは「我等すべての階層の市民がよりよく向上し、より豊かに、幸せになるという米国の夢、これが我等が全世界の思想と幸福にした最も偉大な貢献である」というものだ。

30年以上の民権運動が、米国の制度から階級、民族差別を徹底的に無くし、『アメリカンドリーム』は精神的なレベルで人々に選択の機会の平等を意味し、移民を含む無数の米国人がこの自由平等な地で自分達の夢を実現した。投資家のバフェットが自分の生涯を総括した「わが最大の成功は1930年という正しい時間に、正しい国、即ちアメリカに産まれた事だ」という言葉は世界的に有名だし、キッシンジャーやソロス、グーグル創始者の1人ブリンはみな外国からの移民である。

《民権を忘れた”チャイナドリーム”は黄粱一炊の夢》

本質から言えば、「チャイナドリーム」と「アメリカンドリーム」はそれぞれ現代の世界の政治文化の両極端であり、人民と国家の間の完全に違う関係を体現している。米国は民治、民有、民が享受する民主政治であり民の権利は各種制度のうちに十分保障されており、この社会制度の下で「アメリカンドリーム」が生まれ、それは米国人民が人間の価値を実現するためつくった、人生のドリームである。

他方「チャイナドリーム」は国家主義を骨に、”動員力”を強化するために「民族主義」の衣を着せた。中共政治の骨子は絶対専政である。中共最高指導者層は依然として「朕は国家なり」と当然のように自らを国家、人民、民族の代表である主張し、「チャイナドリーム」のテーマから「人民にサービスする」の中味まで、すべて党が決めたらもうそれでおしまいだ。かくて民生、民権を顧みず、富国強兵を目標とする「チャイナドリーム」は民族の夢ではなく、ましてや中国人民の夢などでなくそれは中共権力集団が自分達の政治合法性のために膨らました虹色のシャボン玉であり、黄粱一炊の夢(*「邯鄲の夢」の故事)にも及ばぬはかない夢物語にすぎない。(終)

(《中国人权双周刊》第100期 2013年3月8日—3月21日)

拙訳御免/原文は biweekly.hrichina.org/article/5796 


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