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花主ワンドロ お題「誕生日」 #花主創作60分一本勝負
ワンドロ開催4回目おめでとうございまーす!

花主のつもり。
花村陽介21歳という響きがヤバイ

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◆誕生日

「おーい! 今日、夜なんだけどさ……」
「あ、ごめん。先約がある」
「ちょ、なんで言う前に断られてんの? つか、なんでわかんの!?」

あっさり口にしておいてなんだが、このテンションの誘いを断るのはじつはかなりの精神力を必要とする。
理由はハッキリしていて、今日の『先約』相手のテンションととても似ているのだ。とんでもないマイペースと言われ続けてそろそろかなりの年数が経つが、そいつの「お願い」にはどうしても甘くなってしまう自覚は出会った当初からある。

なんで甘くなってしまうのかはあまり考えたことはないが、まあ結局は最初から相手のことを気に入っていたんだろう。そうとしか思えない。

それにしても、だ。

「ところで、月曜から合コンか?」
「そーだよ、悪いか!?」
「いや、悪くはないけど」

なんていうか、このタイミングの悪さみたいなものもそいつと似てるような気がしてくると、そのままスルーしてしまうのも悪い気がして、つい言葉を続ける。

「合コンなら、週末のほうが勝率高いんじゃないかなあと思って」
「それを言うなよ……週末じゃ予定抑えられなかったんだよ……」

がっくりとうなだれるその姿まで、今日の先約相手を彷彿とさせた。


俺には、高校二年のときから自他共に認める相棒がいる。

『相棒』だなんてちょっとこっぱずかしい響きだが、なにしろ俺の相棒はそういういかにも青春っぽいちょっと恥ずかしい言葉やシチュエーションが大好きなタチなのでしょうがない。そんなところが、あいつの長所でもある。
今日、俺が合コンの誘いを断ることになった『先約』相手も、その相棒だ。今日は相棒・花村陽介の、二十一回目の誕生日だった。

知り合って一年目はあいにくお互いの誕生日が過ぎ去ってからその日を知り、二年目は住んでいた場所が遠すぎてせいぜいメールと電話のやり取りをするくらいしかできず、三年目に大学生になってやっとそれぞれの誕生日を祝えたという俺たちは、それ以来ずっと互いの誕生日をふたりで祝っている。

陽介というのは軽そうな見た目に反して一途というかロマンチストというか、誕生日とかそういう記念日は彼女と過ごしたいとか言い出すタイプなので、唐突に今年は彼女と誕生日するからと言われる覚悟は、じつは三年前からずっとしていた。いやだって、普通そうだろう。誰だって彼女が出来たら、いくら相棒って呼び合ってるような親友がいたとしても、当然彼女を取る。俺だってたぶんそうする。

ただ、俺にはこの先当分の間彼女を作る予定はないし、となれば陽介の誕生日も俺自身の誕生日も、当然陽介との約束が最優先となるわけだ。とはいえ、それこそ高校の頃からずっと彼女欲しいって言い続けている陽介は彼女を作るための努力をしているだろう。だから、いつこの習慣がなくなってもおかしくはないのだが。

「かんぱーい!」
「誕生日おめでとう、陽介」
「おー、サンキュ!」

どういうわけか、こうしてつつがなく続いている。おかしいな、大学生になってからの陽介は昔より下ネタへの食いつきも激しくないし、がっつき度も減ってるし、見た目は最初から文句ないし、かなりモテてるはずなんだが。
まあ、俺の目の前で上機嫌としか言いようのない満面の笑みを浮かべてビールをあおってる姿を見る限り、この状況に不満があるわけではなさそうだ。それならまあ、いいのかもしれない。

「うめー! なんでお前の作るメシってこんな美味いの?」

勢いよくビールを空にした陽介は、早速テーブルの上に並んでいる料理をものすごい勢いで平らげている。なんでもいいから、ちゃんと噛め。
今日は陽介の誕生日だから、ここに並んでいる料理は全部俺の手作りだ。ちょっとがんばったのはヒミツでもなんでもない。
いや、だって、陽介が生まれてきた日にいちばん感謝してるのは、たぶん俺だろうから。

「愛がこもってるからじゃないか」

しれっと少しだけ本音を混ぜたら、陽介が目を丸くした。喉に詰まらせたり咳き込んだりしなかったのが、ちょっと意外だ。
目を丸くしたままもぐもぐと口を動かし、ごくんと飲み込んでから、陽介はじっと俺の顔を見る。いつも思うが、こいつはこんなときでも妙に行儀がいい。

「マジか」
「マジだ。基本的に料理には愛を込めるけど、陽介に食わせるものを作るときはいつも以上に込めてる」

嘘偽りはないので真顔で頷いたら、陽介はどういうわけか今まで以上に嬉しそうに笑った。

「そっか、そっか。相棒の愛か。へへっ、いいモンもらっちまったよな。返せって言われても返さないかんな」
「や、返せとは言わないけど……」
「うん、お前の愛は俺のだから!」

うん? なんか、予想と違うほうに話がいってる気がする?
というか、なんでこいつ驚かないんだろう。陽介の友情はかなり暑苦しいほうで、冷静に考えると愛情と友情の区別がかなりつきにくいラインの上をフラフラしてる系だけど、基本的に男の愛とか気持ち悪がってた気がするんだが。
そこまで考えて、ひとつの可能性に行き当たる。

「陽介、もう酔ってる?」
「酔ってねえよ素面だよ!」
「素面で今の発言はいろいろ物議を醸すぞ、普通」
「俺もそう思うけど、素直な気持ちなんだからしょーがねえじゃん……」

あ、拗ねた。拗ねてても箸が止まらないことに、ある意味感心する。

「まあ、いいけど。欲しいならやるよ、俺の愛」
「……へ? え、マジで?」
「欲しいならな」
「え、欲しい。全部欲しい」
「んじゃ、やるよ。そのかわり、陽介の愛も俺のモノな」

俺が今まで彼女を作らなかった理由が陽介の存在だったって知ったら、こいつは一体どういう顔をするのだろうか。

「そんなんでいいなら全部持ってって! つか最初からそうだから!」
「……ん?」
「…………あれ?」

もしかして、陽介が今まで彼女を作らなかった理由と、同じだったりするのだろうか。

「……ま、いっか」
「う、うん、いいと思う」
「それじゃ、今後ともヨロシク」
「お、おう」

まあ、それもまた、いいんじゃないだろうか。
どうせ、親友で相棒に、関係がひとつプラスされるだけだから。


02:01 PM - 21 Jun 15 via Twishort web app

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